この言葉にピンと来た方は、グループ・サウンズの大御所、ザ・テンプターズの曲、あるいはそれをカバーした桃姫BAND(尾崎亜美)のタイトルを思い出すかもしれません。
しかし、筆者にとってこの言葉は、アニメ『かみちゅ!』のサブタイトルになります。
はじめに
筆者がこの旅を決めてから、プレイリストにぶち込んだ曲があります。
このタイトルにある『神様お願い!』を筆頭として、
- 青春のいじわる
- 野性時代
- 時の河を越えて
- 君に決定
そう、アニメ『かみちゅ!』のサブタイトルに使われていた曲です。
これらのサブタイトルは、1980年代のアイドルソングなどから取られています。タイトルだけを並べれば、当時の音楽に詳しい方なら別の景色が浮かぶかもしれません。
筆者の場合は、これらをAmazon Musicのプレイリストに放り込むところから、今回の旅が始まりました。
尾道を歩き、作品の舞台となった場所を訪れる。そのための準備として、まずは音楽から作品の世界に入っていくわけです。
……我ながら、ずいぶんと回りくどい準備運動です。
筆者にとっての『かみちゅ!』
以前の断章でも触れたとおり、筆者にとって尾道は、単にアニメの舞台だから訪れたい町ではありません。
そもそも、筆者が尾道という町を知り、実際にその空気を感じた後で『かみちゅ!』に出会っています。
作中では、中学生の一橋ゆりえが突然神様になってしまいます。けれども、物語の中心にあるのは、神様になったことによる壮大な冒険ばかりではありません。学校に通い、友人と過ごし、町を歩く。そんな日常の中に、神様や不思議な出来事が自然に溶け込んでいます。
この世界観が、実際に歩いた尾道の町と重なりました。
筆者にとって『かみちゅ!』は、作品を見てから舞台を訪ねたというよりも、先に五感で記憶していた町が、作品を通じてもう一度つながったような存在です。
だからこそ、今回の旅行で自転車を置いていく判断をしたのは、断腸の思いでした。自転車で尾道を走ることも、もちろんやりたかったことです。
しかし、今回あらためて確かめたかったのは、自転車で走ることそのものではありません。尾道という町を歩き、以前訪れた場所にもう一度立つことでした。
そして、せっかく尾道に来たのですから、『かみちゅ!』の聖地も巡りたい。
今回の行程では、そんな筆者にとって外せない場所を3か所回ることにしました。
尾道で確実に行ける3つの聖地
福本渡船「神様御用達」のフェリー

まずは、福本渡船です。
『かみちゅ!』に登場する来福神社は、神様がいる神社として描かれています。その神様にゆかりのある場所を巡る旅で、渡船という存在を外すわけにはいきません。
尾道の町と向島を結ぶ渡船は、単に対岸へ移動するための交通手段ではありません。海を挟んで向かい合う町の景色と、そこを日常的に行き来する人々の暮らしをつなぐ存在です。
そして福本渡船は、多くの人々に惜しまれながら、その長い運航の歴史に幕を下ろしました。
今となっては、かつてのように船に乗ることはできません。それでも、尾道の風景と暮らしを形作ってきた渡船の記憶までなくなったわけではありません。
今回の聖地巡礼では、作品に描かれた世界と、現実の尾道の町が重なる場所として、この渡船を記録に残しておきたいと思いました。
御袖天満宮
続いて、御袖天満宮です。

『かみちゅ!』に登場する来福神社。その境内のモデルとなった場所です。
作中では、主人公の一橋ゆりえが神様となり、三枝祀(みこ)の実家でもある来福神社を中心に、さまざまな出来事が展開します。
その来福神社の境内に対応するのが、ここ御袖天満宮です。

そして、この場所にはもうひとつ、映画ファンにとってもおなじみの景色があります。映画『転校生』で、人格が入れ替わる場面に登場する石段です。
ひとつの場所に、異なる作品の記憶が重なっています。
『かみちゅ!』の舞台として見るなら、神様が暮らす神社の境内。『転校生』の舞台として見るなら、物語が大きく動く石段。
実際にその場に立つことで、作品の中で見ていた景色が、現実の町の中に存在していることを確かめられます。
艮神社
そして、艮神社です。

こちらは、来福神社の拝殿に対応する聖地です。
御袖天満宮が境内のモデルであるのに対し、艮神社は拝殿のモデル。この2か所を巡ることで、作中の来福神社が、現実の尾道にある複数の場所から形作られていることが分かります。
特に印象的なのは、『かみちゅ!』のオープニングです。艮神社の社殿は、タイトルロゴと重なる場所としても知られています。
作品を見ていたときには、ひとつの神社として目に入っていた景色。しかし、実際の場所を訪ねると、境内と拝殿という異なる要素が、それぞれ別の場所に対応していることに気づきます。
御袖天満宮と艮神社。どちらか一方だけではなく、両方を訪れることで、来福神社という架空の場所を立体的に捉えられるわけです。
神様にお願いした後は
こうして、福本渡船、御袖天満宮、艮神社と、今回訪れたかった3つの場所を巡ることができました。
作品の中でひとつの場所として描かれたものが、現実の尾道では複数の場所に分かれている。その違いを確かめながら歩くのも、聖地巡礼の楽しみです。
そして、今回の筆者には、もうひとつ大事な目的がありました。
先ほど、尾道焼きというメインイベントを完食したばかりです。
神様にお願いをした後は、歩いて腹ごなし。
……とはいえ、尾道の坂道と石段を巡れば、それだけで十分に運動になってしまうのですが。
こうして筆者は、作品の記憶をたどりながら、再び尾道の町を歩いていくのでした。
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