はじめに
「That's not a Prediction, that's a SPOILER!」
「それは予測ではない。ネタバレだ!」
この言葉を聞いて、プロレスファン、とりわけWWEを見ている方なら、ポール・ヘイマンの顔を思い浮かべるでしょう。
ポール・ヘイマン。1990年代にECWを率いてWWF(現WWE)、WCWと熾烈な視聴率争いを演じ、現WWEではブロック・レスナーをはじめとする数々の大物レスラーのマネージャーを務めてきた人物です。
彼の武器は、リング上での格闘技術ではなく、マイク一本で状況を支配する話術にあります。
自分の担当するレスラーがいかに強いのか。対戦相手がいかに無謀なことをしようとしているのか。そして、これから何が起きるのか。ヘイマンは、試合が始まる前からそれを観客に叩き込みます。
「うちの選手が勝つでしょう」などという、曖昧な予想ではありません。勝つことは決まっている。あとは、現実がその結末に追いつくのを待つだけ。
だから、これは予測ではありません。ネタバレなのです。
私は、この食えない言い回しが好きです。
もちろん、人格者として尊敬しているとか、人生の師にしたいとか、そういう話ではありません。言葉巧みに相手を追い込み、逃げ道を塞ぎ、最後には「だから言ったでしょう?」とでも言いたげな顔をする。あの悪徳参謀じみた立ち回りがギミックとして最高に好きです。
プロレスは、リングの上だけで完結するものではありません。試合前の宣言も、選手同士の対立も、勝敗が決した後の反応も含めて、一つの物語を形作っています。
ヘイマンは、その物語を語るだけでなく、ときには結末を先に宣言することで、観客にその瞬間を見届けさせるのです。
さて。
そんな言葉が、今回の旅で私の脳内に響くことになりました。場所は尾道、千光寺です。
千光寺にて
千光寺を参詣の折、風鈴の音が聞こえました。音のする方に目を向けると、そこには色とりどりの風鈴が並んでいました。
片手には傘。もう片方の手には、iPhone Air。
特別に写真を撮るつもりで構えていたわけではありません。風鈴の音が聞こえたので、スマートフォンを掲げ、シャッターを切りました。
それだけです。
画面を見て構図を吟味したわけでも、露出を調整したわけでもありません。片手は傘で塞がっていますから、両手でしっかりと構えることもできません。
いわば、ノールック撮影です。そのシャッターを切った途端、この言葉が響き渡りました。プレビューを見る前から、です。
「That's not a Prediction, that's a SPOILER!」
「それは予測ではない。ネタバレだ!」
一枚だけ
今回、掲載する写真は一枚だけです。

風鈴のガラスに映る光。色とりどりの短冊。奥へと続く風鈴の列。そして、手前に大きく写り込んだ風鈴。
きっちりと構図を整えた写真ではありません。むしろ、手前の風鈴が視界を遮り、短冊が重なり合い、画面の中には少々雑然とした印象すらあります。
風鈴を一つずつきれいに見せるのではなく、風鈴が並ぶ場所そのものを切り取ったような一枚になっています。写真を撮るために立ち止まったというより、風鈴の音に気づいたときの景色が、そのまま残っているような形で撮れました。
もちろん、毎回こんな写真が撮れるわけではありません。狙って再現できるものでもありません。
ネトフリのドキュメンタリー『WWE:UNREAL』でスーパースター、チェルシー・グリーンがペンタとのインタージェンダー・マッチを行ったときの言葉の方がより適切です。
「もう一度やれって言われてもムリ。完璧なものは再現できない」
まさにそんな形です。シャッターを切った後に、向こう10年は撮れないであろう写真が、そこにありました。
更にお気づきの通り、弊ブログの新たなヘッダーがこの画像です。
「よし、ヘッダーゲット!」と言うより先に脳内の悪徳参謀は、早くも勝利を宣言していたのです。
なので、改めて宣言します。
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