はじめに
このタイトルを聞いて、ピンとくる方は多いと思います。
アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』、そのイタリア語タイトルが『Vento Aureo』。そして『il vento d'oro』といえば、敵へのトドメで流れる、いわゆる「処刑用BGM」として知られるあの曲です。
MLBオールスターでも大谷翔平選手が入場曲としてリクエストしたことで話題になりました。そんな曲が、今回のエントリーの鍵となります。
……鍵というよりは、契機と呼んだ方が正確でしょうか。なにしろ、今回立ち向かう相手は敵スタンド使いではありません。自分自身が溜め込んだ、ある種の負債です。
記録負債という言葉
筆者には、日課と呼べるものがいくつかあります。
- 毎日のWordPress公開
- ほぼ日手帳への記録
- ZENタイルの記録
こう並べると、いかにも毎日きっちりと記録をこなしているように見えるかもしれません。しかし、実態は少し違います。
大事なのは、必ずしもその日のうちに全部を終わらせることではありません。最終的に帳尻が合えばいい、というのが筆者のスタンスです。記録を溜めておいて、後からまとめて処理することもあります。
その結果として発生するのが、記録負債。記録するべき事柄がなくなるわけではありません。単に未来の自分へ仕事を先送りしているだけです。
そして、未来の自分は大抵、別のことをしています。こうして発生した負債を返済するため、筆者は定期的に時間を設けています。
お金の記録は、ライフログである
今回の返済対象は、旅行中のお金の記録です。宿に戻ったら、まずは大事な記帳作業が待っています。お金といっても、ここで記録するのは入出金です。
お金の動きは、単なる家計簿の数字ではなく、自分がどのように生活していたかを物語るライフログでもあります。
- 臨時収入。めったにありません。
- 衝動買い。こちらは、とてもよくあります。
- 急遽、病院に行くことになった記録。
普段の生活で何にお金を使い、何が予定外に発生し、どこで判断を変えたのか。そうした出来事が、金額とともに残ります。下手に感情だけを記録するよりも、よほど生々しいものが見えてくることもあります。
筆者がこの記録に使っているのが、セルフホストしている家計管理アプリのFirefly IIIです。
比較的シンプルな操作で記帳でき、検索も速い。口座単位で管理できるため、現金で支払ったのか、カードを使ったのかといった違いも追跡できます。今回の旅行では、これが実に重要な意味を持ちます。
- どこで、何に、いくら使ったのか。
- それだけでなく、いつ使ったのか。
記録を積み上げていけば、旅行中のお金の動きを完全に物語る指標になります。 ……問題は、その物語に登場する数字を、自分自身で支払っていることです。
自分の血液が流出する瞬間
旅行中の出費を記録するということは、レシートや領収証を確認しながら、自分が使った金額を改めて直視するということです。言い換えなくても:お金という自分の血液が流出した事実を、わざわざ自分の手で再確認する作業でもあります。
精神にくる作業です。一泊や二泊程度の旅行であれば、帰宅してからまとめて記録しても何とかなります。しかし、三泊ともなると話が変わります。
レシートも領収証も増えます。記録する項目も増えます。何より、時間が経過するほど「これは何の支払いだったか」を思い出す負担が増していきます。
どこかで、途中で、やらなくてはいけません。しかし、やりたくない。
この二つは、何の矛盾もなく両立します。
そして、両方やらなくっちゃあいけないのが辛いところです。
覚悟はいいか? 俺はできてる
それならば、なぜ朝一番でやらなかったのでしょうか。
旅行記を書いているときには、筆者はしばしば「自動書記」とでも呼ぶべき状態に入ります。記憶が新鮮なうちに、思い出したことを勢いのまま文章へ変換していくのです。
ならば、朝のうちに記帳も済ませてしまえばよかった。ところが、お金の記録は勝手が違います。
旅行記ならば、多少の感情の揺れや記憶の細部が前後したところで、文章としての勢いを優先できます。金額はそうはいきません。
- レシートに書かれた金額と入力した金額が一致するか。
- 現金で払ったのか、カードで払ったのか。
- 記録した取引に抜けがないか。
起き抜けの頭で、これらを正確に突き合わせるのは無理があります。自動書記の勢いだけでは乗り切れない。かといって、先延ばしにすれば負債が膨らんでいく。
そこで必要になるのが、作業を始めるためのスイッチです。
「覚悟はいいか? 俺はできてる」
ここで選ばれたのが、『il vento d'oro』でした。
ミュージックスタート。
トラベラーズノート、マスキングテープ、そしてFirefly III
曲を流しながら、レシートと領収証を一気にまとめていきます。
この作業で役に立ったのが、前回の記事でも登場したトラベラーズノートです。レシートを貼り付け、必要に応じて簡単なメモを残し、それを確認しながらFirefly IIIへ記帳していく。
単にレシートを保管するだけではありません。旅先での支出を振り返り、記録と記憶を結びつけるための作業台として機能してくれました。そして、ここでもう一つ、思わぬ援軍が登場します。
マスキングテープです。
今回、輪行を諦めたことで、当初の予定とは少し違う荷物を携行することになりました。その中に入っていたマスキングテープ群が、ここで役に立ったのです。

レシートを貼り付け、整理し、必要な情報を残す。旅先での記録という観点では、非常に相性のよい組み合わせでした。もっとも、これらを持ってこなかったとしても、筆者はおそらくロフトでほぼ日手帳と一緒に買っていたでしょう。
必要な道具がなければ、現地調達すればいい。旅先での買い物には、そういう側面もあります。
……そして、そうやって増えていく出費もまた、いずれFirefly IIIに記録されるわけです。
無駄無駄無駄ラッシュ、そして17時
『il vento d'oro』の勢いを借りて、次々とレシートを処理していきます。金額を確認し、支払い方法を確認し、取引を登録する。
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!
もちろん、ここで言う「無駄」は、記帳作業そのものを指しているわけではありません。あくまで、積み上がった消費金額に対する感想です。
曲の勢いに乗って、記録負債を一気に返済していきます。
そして、作業開始から約一時間。
ついに、旅行中の支出記録が完成しました。
これで、どこで、何に、いくら使ったのかを振り返るための記録が揃いました。レシートも整理され、Firefly IIIへの入力も完了。先送りにしていた仕事が、ようやく片付きました。
そして時計を見ると、17時。
「つけの…… 領収証だぜ」
と言いながらの次の出費へ向かうため、財布を持って宿を後にしました。
...To Be Continued
