はじめに
岡山駅から新幹線に乗り込み、東京へ。4泊4日にわたるピボット旅行2026も、いよいよ終わりを迎えようとしていました。
指定された座席に腰を下ろし、荷物を整理してやったことはSNSの更新です。今回の旅行中、筆者は意識的にSNSから距離を置いていました。
- 旅先で見たもの
- 食べたもの
- 感じたこと。
それらを逐一SNSに投稿するのではなく、その場での体験を優先していたのです。とはいえ、写真を撮らなかったわけではありません。むしろ、その逆です。
カメラやスマートフォンには、4日間の記録が大量に残されていました。帰りの新幹線は、それらを整理し、写真をアップロードするための時間。
そして、写真を見返すうちに、今回の旅行がいったい何だったのかを考える時間にもなりました。
そもそも、何をピボットしたのか
今回の旅行は、もともとブロンプトンを携行し、しまなみ海道を走ることを大きな目的としていました。
しかし、出発前から気になる天気予報。秋雨前線の影響によって、予定していた日程は雨に見舞われる可能性が高くなっていました。そこで下した決断。
ブロンプトンを置いていく。
10年以上にわたって旅の相棒としてきた折りたたみ自転車。それを置いていくという選択は、単なる荷物の削減ではありませんでした。旅のスタイルそのものを変える決断です。自転車で走ることを前提に組み立てた旅程を捨て、徒歩、鉄道、船を中心とした旅へと切り替える。
つまり、ピボット。
この決断を振り返ると、どうしても思い出す人物がいます。ジョン・シナです。
You Can't See Me.
2025年、ジョン・シナは長年築き上げてきたベビーフェイスとしての立場を捨て、衝撃的なヒールターンを果たしました。それまでの自分を否定するかのような、大胆なギミックチェンジ。
しかし、その試みは必ずしも期待された結果には結びつきませんでした。そして、再びフェイスターンへ。ここで重要なのは、ヒールターンが失敗したという事実そのものではありません。
一度変えたギミックを、もう一度変えることができた。
ということです。筆者もまた、今回の旅行で自分のギミックを変えました。自転車で走る旅行者から、公共交通機関を利用して各地を巡る旅行者へ。
もっとも、筆者の場合は悪役になったわけではありません。ブロンプトンを置いてきたからといって、突然観光客に向かって椅子を振り回すようになったわけでもありませんし。ただし、自分の中では相当に大きな転換でした。
そして、旅を終えようとしている今、もう一度考えます。このギミックチェンジは、果たして成功だったのか。
天候運という現象
筆者は以前から、自分の天候運について一種の確信を持っていました。それは単なる願望ではなく、これまでの経験から得られたものです。
例えば2018年の尾道旅行。台風が接近するという、普通ならば旅行の中止や変更を検討するような状況でしたが、実際に台風の影響を受けたのは夜間。日中は驚くほどの晴天に恵まれ、旅程を楽しむことができました。
しかも、筆者の心境としては「当然」とか「この私が旅をしている以上、それは絶対だ」でした。
それでも今回の旅行では、雨が降りました。それも、実に容赦なく。尾道では雨の中を歩き、金刀比羅宮への参拝にも雨の予報がつきまといました。
従来の自分であれば、こう考えたかもしれません。
「こんなはずじゃなかったのに」
ですが、今回の旅行を振り返ってみると、少し違った景色が見えてきます。
天運の矜恃
確かに、今回の天候運は全面的に味方してくれたわけではありませんでした。
一番降ってほしくない場面では、雨が止んでいた。
まず、海路です。今回の旅行は、東京から徳島へ向かうフェリーによって幕を開けました。そして、瀬戸内海を渡る移動も旅程の重要な一部でした。
船という交通手段を旅の柱に据えた以上、悪天候によって航行や移動そのものに支障が出ることは避けたいところ。その肝心な場面では、天候が大きな障害になることはありませんでした。
そして、もう一つ。金刀比羅宮です。海上交通の守り神として信仰を集めてきた、こんぴらさん。その参拝に際して、雨が止んだこと。筆者にとっては、これが何よりも印象的でした。
海路と、海路を司る神様。そこだけは譲らなかった。まるで、自分の天候運が最後の矜恃を見せてくれたような出来事でした。
すべてを晴れにすることはできませんでした。しかし、守るべきところは守ってくれました。今回の天候運もなかなか味な仕事をしてくれたものです。
雨が見せてくれたもの-That is not a Prediction, That is a SPOILER!!-
そして、今回の旅行で得られた最大の発見の一つ。
雨の中の旅行にも、得られるものがある。
こちらにも記したように、iPhone Airによるノールック撮影。ファインダーを覗き込んで構図を練るのではなく、文字通り、画面を確認せずに撮影したものです。
結果を見るまでも無く、シャッターを切ったときに脳内に響いた
That is not a Prediction, That is a SPOILER!!(これは予言では無い、ネタバレだ!!)

事実、その写真は最終的にブログのバナーにまで採用されました。旅行中に撮影した数々の写真。ブログの顔となったものがノールックで撮影した一枚だったというのですから、何とも出来すぎた話です。
- 雨があったからこそ撮影できたもの。
- ノールックだったからこそ得られたもの。
事前に計画して撮影したものではありません。旅の中で、その場の状況を受け入れ、シャッターを切った結果です。そして、そうして残された写真が、旅を終えた今、何よりも雄弁に今回の旅行を物語っています。
SPOILER!
最初から結末を知っていたのは、案外、筆者ではなく写真の方だったのかもしれません。
崩れたバイアス
今回の旅行では、いくつもの先入観が崩れました。
まず、高松という街に対する認識。当初、筆者が高松に期待していたのは、四国や中国地方を巡るための交通拠点としての利便性でした。
- うどんが美味しい。
- 鉄道や船の接続がよい。
それだけでも十分に魅力的な街だと思っていました。しかし、実際に滞在してみると、それだけではありませんでした。
- 商店街を歩く楽しさ。
- 地元の食文化。
- 思いがけない発見。
旅の終わりに近づくにつれ、また訪れたいと思うようになっていたこと。単なる拠点として選んだ街が、旅の目的地そのものになっていたのです。
また、自転車がなければ行動範囲が狭まるという認識も変わりました。
- 長距離移動を鉄道に任せる。
- 船に乗る。
- 歩きたい場所で歩く。
- 疲れたら休む。
そして、天候に応じて行き先を変える。自転車を持たないことは、行動の制限ではなく、別の選択肢を手に入れることでもあったのです。
食事についても同様でした。事前に綿密な計画を立てなくても、その場で自分の食べたいものを選ぶ。時には予定を変更する。その結果、思いがけない美味しいものに出会う。
徳島ラーメン、うどん、骨付き鶏、そして最後の岡山でのえび飯。特にえび飯は、会計時に現金が足りるかどうかという、今回の旅でも最大級のピンチを伴いました。
このように、今回の旅行では、自分が当然だと思っていたものが次々と覆されました。
しかし、そのどれもが不快なものではありませんでした。むしろ、これまでの自分が持っていなかった視点を与えてくれたのです。
記録するということ
そして、今回の旅行で得られた最大の収穫。それは、記録です。筆者は普段からWordPressでブログを更新しています。
技術的な作業記録、日々の出来事、趣味の話、旅行記。興味を持ったことを調べ、実際に体験したことを文章にする。
それが、長年続けてきた習慣です。今回の旅行でも、同じことを続けました。4泊4日も旅先での出来事を記録し、帰宅後も記事としてまとめ続けました。
しかも、一つの出来事から複数の記事が生まれることもありました。
- 何気ない食事。
- 移動中の出来事。
- 天候による予定変更。
- 買い物。
- 写真。
- それらの出来事から派生する、自分自身の考察。
気がつけば、今回の旅行は、当初想定していた以上の分量の旅行記になっていました。単に記事の本数が増えたことではありません。
体験を記録することで、その体験から得られるものが増えていった。
ということです。旅先では気づかなかったことが、文章にする過程で見えてくる。別々の出来事だと思っていたものが、後から一つの流れとしてつながる。そして、記録を読み返すことで、自分が何を考え、どのような判断を下したのかが分かる。
これは、普段のサーバ運用にも通じるものがあります。
- 何が起きたのか。
- なぜ、その判断をしたのか。
- 結果はどうだったのか。
次に同じような状況が起きたとき、どうすればよいのか。
ログを残すことの意味は、単に過去を保存することではありません。未来の自分が判断するための材料を残すことです。
今回の旅行記も、まさにそのような記録になりました。
- 雨に降られた。
- 予定を変えた。
- 想定外の出来事が起きた。
- それでも、旅を続けた。
そして、その一つ一つを記録することができた。筆者にとって、これ以上の収穫はありません。
Finish the Story
新幹線の車内。写真のアップロードを続けながら、今回の旅行を振り返ります。当初の予定通りにしまなみ海道を走っていたら、どのような旅になっていたでしょうか。
それは、それで楽しい旅だったと思いますが、今回訪れた場所や、出会ったものの多くは経験できなかったでしょう。
- ブロンプトンを置いていくという決断。
- 天候に応じて旅程を変更するという判断。
- 雨の中でも楽しめるものを見つけるという発見。
そのすべてが、今回のピボット旅行を形作っていました。ここで、冒頭のジョン・シナの話に戻ります。
一度ギミックを変えたからといって、そのギミックに固執する必要はありません。うまくいかなければ、また変えればいい。もちろん、自分が納得する範囲で。
今回の旅を終えたからといって、筆者がブロンプトンに乗らなくなるわけではありません。
- また自転車で旅をしたくなったら、そうすればいい。
- 徒歩や鉄道で旅をしたくなったら、そちらを選べばいい。
大切なのは、過去の自分が決めたスタイルを守り続けることではなく、その時々で自分が納得できる選択をすることです。
つまり、今回のピボット旅行は、ブロンプトンを置いていくことで始まりましたが、ブロンプトンを否定する旅ではなかったのです。むしろ、これまでの旅の経験に、新しい選択肢を加える旅でした。
そして、今回の旅を通じて得た経験は、すべて記録として残っています。
- 天候運への確信。
- 崩れたバイアス。
- 自分の判断。
- 思いがけない出会い。
その一つ一つが、次の旅へとつながっていくことでしょう。
旅は終わります。
しかし、旅によって得られたものは終わりません。
新幹線は東京へ向かって走り続けます。写真のアップロードを終え、筆者は改めて今回の旅を思い返しました。
最初に思い描いていた旅とは、まったく違うものになりました。ですが、
これが、筆者の選んだピボット旅行2026です。
そして、そのすべてを書き残すことができました。物語を終わらせるために必要だったのは、当初の計画を完遂することではありません。自分で選び、自分で歩き、自分で記録すること。
その積み重ねによって、初めて自分の物語が完成するのです。
Finish the Story.
ピボット旅行2026、これにて終幕です。