Redmine 6.xへの移行を見据え、現在運用しているRedmine 5.1とは別に、同一サーバー上へRedmine 6.1の検証環境(redmine-v6)を構築しました。

「同じサーバーなら、そのまま新しいRedmineを入れればいい」と考えがちですが、不用意にシステム全体のRuby環境やWebサーバー設定を書き換えると、既存の稼働中サービスを巻き込んで停止(500エラー等)させるリスクがあります。

今回の構築では、「Redmine 6.1を動かすこと」以上に「現在動いている既存環境(5.1)に一切影響を与えないこと」を最優先に設計しました。そのための設計思想と具体的な構築手順をまとめます。

既存環境を壊さないための3つの原則

RedmineはRubyやGem、Webサーバー(Apache)など多くの基盤を利用するRailsアプリケーションです。既存環境との共存にあたり、特に以下の3点を徹底しました。

  1. sudo gem install を安易に使わず、ライブラリをプロジェクト内に隔離する
    システム全体にGemをインストールすると、既存Redmineが依存するGemバージョンと競合する恐れがあります。Bundlerを利用し、依存ライブラリはすべて検証環境のディレクトリ配下(vendor/bundle)へ閉じ込めます。
  2. Bundlerの設定をローカル(プロジェクト単位)に限定する
    グローバル設定(~/.bundle/config)への書き込みを避け、bundle config set --local を使用して対象ディレクトリ内でのみ設定を完結させます。
  3. Apacheの既存設定には触れず、新しいVirtualHostを追加するのみにとどめる
    既存のサイト設定(000-default.conf や既存Redmine用設定)の無効化(a2dissite)は行わず、新規VirtualHostの作成と有効化(a2ensite)だけで対応します。

検証環境・前提条件

  • OS: Ubuntu 24.04 LTS
  • Ruby: 3.2.x系(Ubuntu標準パッケージ / 5.1系と6.1系の両方に対応)
  • DB: MySQL 8.x
  • Web: Apache 2.4 + Passenger
  • Redmine: 6.1-stable(新規検証用)
  • パッケージ管理: aptitude(※aptでも同様に実行可能です)
  • 名前解決: 検証用ドメイン/サブドメインのDNS名前解決が完了していること

多分さっくりとはしていない手順

  1. Redmine-v6用のDBを作成します。
  2. Redmine 6.1を配置します。
  3. データベース接続設定を行います。
  4. Gemの初期化と設定を行います。 (※既存環境を壊さないように注意!!!)
  5. Apacheのvirtualhostを設定します。
  6. 設定を反映します。
  7. 動作確認を行います。

1. データベースと専用ユーザーの作成

既存のデータベースと完全に分離するため、redmine_v6 専用のDBおよびユーザーを作成します。

sudo mysql -u root -p
-- データベース作成
CREATE DATABASE redmine_v6 CHARACTER SET utf8mb4;

-- 専用ユーザー作成(パスワードは任意のものに変更してください)
CREATE USER 'redmine_v6'@'localhost' IDENTIFIED BY 'your_secure_password';

-- 権限付与
GRANT ALL ON redmine_v6.* TO 'redmine_v6'@'localhost';
FLUSH PRIVILEGES;
EXIT;

作成したユーザーで接続できるか確認します。

mysql -u redmine_v6 -p -e "SHOW DATABASES;"

2. Redmine 6.1 の配置

配置ディレクトリを既存環境と分けて作成し、ソースコードを取得します。

  • ディレクトリ作成
sudo mkdir -p /home/www-data/redmine-v6

※自分の環境に合わせます。

  • ディレクトリの所有者変更
sudo chown -R www-data:www-data /home/www-data/redmine-v6
  • Redmine 6.1-stable の取得
sudo -u www-data svn co https://svn.redmine.org/redmine/branches/6.1-stable /home/www-data/redmine-v6

3. データベース接続設定

設定ファイルのサンプルをコピーし、先ほど作成した redmine_v6 の情報を設定します。

sudo -u www-data cp -pi /home/www-data/redmine-v6/config/database.yml.example /home/www-data/redmine-v6/config/database.yml

/home/www-data/redmine-v6/config/database.yml を編集します。

production:
  adapter: mysql2
  database: redmine_v6
  host: localhost
  username: redmine_v6
  password: "your_secure_password"
  encoding: utf8mb4

4. Gemのローカルインストールと初期化

Gemの競合を防ぐため、必ずローカル設定で vendor/bundle 配下にインストールします。

  • Redmine(v6)のルートディレクトリに移動
cd /home/www-data/redmine-v6 && pwd

旧環境に移動すると偉い目に遭います。(遭いました

  • Bundlerの設定をローカルに限定
sudo -u www-data bundle config set --local path 'vendor/bundle'
sudo -u www-data bundle config set --local without 'development test'
  • 依存関係の調整とインストール
sudo -u www-data bundle update stringio
sudo -u www-data bundle install
  • シークレットトークンの生成
sudo -u www-data bundle exec rake generate_secret_token RAILS_ENV=production
  • DBマイグレーション
sudo -u www-data bundle exec rake db:migrate RAILS_ENV=production
  • デフォルトデータのロード(日本語)
sudo -u www-data RAILS_ENV=production REDMINE_LANG=ja bundle exec rake redmine:load_default_data
  • アセットのプリコンパイル
sudo -u www-data bundle exec rake assets:precompile RAILS_ENV=production

5. Apache VirtualHost の設定

既存の稼働中サイトには一切触れず、Redmine 6.1用の設定ファイルのみを新規作成・有効化します。

cat <<- __EOF__ | sudo tee /etc/apache2/sites-available/redmine-v6.conf
<VirtualHost *:80>
    ServerName 【v6.example.com】
    DocumentRoot /home/www-data/redmine-v6/public
    <Directory /home/www-data/redmine-v6/public>
        Options -MultiViews
        AllowOverride All
        Require all granted
    </Directory>
</VirtualHost>
__EOF__

【v6.example.com】 はご自身の検証用ドメインに書き換えてください。
※ これはあくまでもhttpd専用であり、ログもありません。適宜、セキュリティポリシーに沿って運用します。

6. 設定の反映

  • 新規サイト設定のみ有効化
sudo a2ensite redmine-v6.conf
  • 構文チェック(Syntax OK を確認)
sudo apache2ctl configtest
  • Apacheの再読み込み
sudo systemctl restart apache2.service

7. 動作確認

ブラウザから http://設定した検証用ドメイン にアクセスし、Redmine 6.1 のトップページが表示されれば構築完了です。

重要: 初期管理者アカウント(admin / admin)で即座にログインし、パスワードを強固なものへ変更してください。

おわりに

今回の検証環境構築では、Redmine 5.1(Rails 6.1系)とRedmine 6.1(Rails 7.2系)が共にRuby 3.2系をサポートしていたため、Ruby本体を共用しながらディレクトリ・Gem・DB・VirtualHostのレベルで環境を安全に分離できました。

サーバー運用においては、「新しい環境を動かすこと」以上に「稼働中の資産を壊さない境界線を引くこと」が重要になります。