「信頼の置ける道具、持っていますか?」という問いかけと私の回答というお話。
はじめに
漫画『MASTERキートン』に以下のやりとりがあります。
「やめておけ」
「…………」
「拳銃の方が、ナイフよりも速いと思っているんだろう。
だが、拳銃はデリケートな道具だ。
弾が出ないかもしれないし、
思い通り的に当たるとは限らん。
おまけに拳銃は、
抜き、構え、引き金を引くまでに三動作(スリーアクション)……
その点ナイフは、一動作(ワンアクション)で終わる。
この距離なら、絶対に俺が勝つ!!
どうする? それでもやってみるかね?」
これは「至近距離でのナイフの有用性」を示したものであり、実際にその通りだという説得力があるものです。
では、この言説は本当なのか? ということで、AIによる試算を行います。
ナイフ vs. 拳銃:速さの決定的な差
この原則は、「21フィート・ルール(タフ・テスト)」と呼ばれる、銃器を携行する際の安全距離を示す経験則で裏付けられます。
拳銃の「三動作」にかかる時間
拳銃で有効な射撃を行うには、
- 抜き(ドロー)
 - 構え
 - 引き金を引く
 
最低限の三動作が必要です。
| 動作 | 所要時間(訓練された者) | 
|---|---|
| ドローから有効射撃まで | 約 1.5 秒 ~ 2.0 秒 | 
ナイフ攻撃の「一動作」にかかる時間
ナイフを持った人間が相手に致命的な一撃を加える動作は一動作で完了し、さらに相手に向かって距離を詰める速度が加わります。
| 動作 | 所要時間(突進・刺突) | 
|---|---|
| 約 6.4メートル(21フィート)を詰める | 約 1.5秒 | 
速さの結論(21フィート・ルール)
ナイフを持った人間は、約 6.4メートル(21フィート)の距離から突進してくる場合、銃を抜いて発砲するまでの時間とほぼ同等で相手に到達できます。
- 漫画のシーンのように、21フィートよりも遥かに近い距離(数フィート)の場合、拳銃の三動作が完了する前に、ナイフの一動作による攻撃は確実に相手に到達し、致命傷を与えることが可能です。
 - プロフェッサーの「この距離なら、絶対に俺が勝つ!!」という言葉は、この時間と距離の絶対的な差に基づいた、極めて正確な戦術的宣言なのです。
 - (もちろん、拳銃に慣れていない/ナイフの熟達、生死のやりとりの覚悟ができていない/できているの差は一番大きいでしょう)
 
拳銃の「デリケートさ」がもたらすリスク
プロフェッサーが指摘する「拳銃はデリケートな道具だ」という点も、至近距離戦においてナイフの優位性を裏付けます。
- 機能不全のリスク:
- 弾が出ないかもしれない(ジャミング、装填不良)。機械的な構造を持つ拳銃は、至近距離でのもみ合いや、些細な不具合で機能不全を起こすリスクがゼロではありません。
 
 - 命中精度の問題:
- 思い通り的に当たるとは限らん(照準の困難)。突発的な近接戦闘では、冷静に狙いを定める余裕がなく、また物理的な妨害により、有効な射撃が困難になります。
 
 
この「デリケートさ」と「動作の多さ」は、そのまま私の道具を選ぶポイントにも表れています。
「デジタル器具の逆説」
私は当ブログにおいて
- Redmine
 - Growi
 - Nextcloud
 - BookStack
 - (Firefly等も)
 
といった、様々なOSSのWeb記録ツール、そしてそれらを扱うPCやスマートデバイスなどを紹介してきましたが、そもそもの問題として私は「デジタルな道具を完全に信じていません」。その証拠にこちらの道具群をご覧ください。
道具群

- ペンケース
- ほとんどがLAMY Safari万年筆
 
 - 手帳類
- ほぼ日手帳
 - ジブン手帳
 - トラベラーズノート
 - 情報カード
等。これらは全て普段から持ち歩いているものです。(当然、鞄はギッシリです)ですが、それなりに理由があります。 
 
「アイディアの揮発性」
閃いたアイディア、特に「100文字程度の短いひらめき」は、掴まえようとしなければ水蒸気のようにたちまち消えてしまいます。この一瞬の勝負において、私はデジタルツールを信用していません。
プロフェッサーの言葉を借りるならば、アイディアを捕捉するこの至近距離の戦闘では、デジタルツール(拳銃)の「三動作」は、紙とペン(ナイフ)の「一動作」に敗北します。
アイデア記録における「動作」と「時間」の比較
以下は、100文字程度のアイディアを記録し終えるまでにかかる動作と時間の比較です。
| 道具 | 道具の比喩 | 記録までの動作 | 所要時間(目安) | 思考の中断リスク | 
|---|---|---|---|---|
| 紙とペン | ナイフ | 1 動作 | 約 20 秒 | 極小 | 
| デジタルツール | 拳銃 | 3 動作 | 約 38 秒以上 | 高 | 
紙とペン(ナイフ):確実な「一動作」
紙とペンは、「書く」という一動作で記録が完了します。この約 20 秒間、思考の流れを一切止めることなく、揮発性の高いアイディアを紙の上に瞬時に定着させることが可能です。これは、プロフェッサーが示した最短距離、最小動作で確実に仕留めるという原則そのものです。
デジタルツール(拳銃):遅延を生む「三動作」
スマートフォンやPCのアプリで記録する場合、必ず以下の「三動作」が介入します。
- 起動(抜き):スリープ解除、パスコード解除、アプリ起動。
 - 新規作成(構え):新規メモ画面への遷移、ツール内のファイル選択。
 - 入力(発射):タイピング。
 
この「抜き、構え」のプロセスで生じる約 20 秒弱のタイムラグこそが、拳銃がデリケートな道具である最大の理由です。アイディアは、ツールを起動し構えている間に、すでに空中に消え去っている可能性があるのです。
→ このアイディアの揮発性というのは非常に致命的なものであるというのは皆様も経験があると思います。
それ以上に大切な「デジタルメモのデリケートさ」
スマートデバイスの動作不良の確率は、メモやペンよりも高いことに異論は無いと思います。
それ以上に
- NW不調によりログイン不可(Webサービスを用いている場合)
 - 同期の不安定
 - 何よりもサービス終了の恐怖
 
はつきまといます。
反面、紙とペンなら
- ほぼ確実に書くことができます。
 - 忘れたとしても(都会であればなおさら)すぐに手に入ります。
 - 「自分さえ分かれば」どんな言語、記号、絵だろうと分かるという自由度があります。
 - 何よりも「ペンと紙が生産終了になる」というケースはかなりの世紀末の状況になると思われます。
 
まとめ
「ちょっとしたアイディアのメモ」という
- 即時性
 - 確実性
 - 安定性
 
が求められる状況下においては、紙と筆記具がこそが、思考を守る最も信頼できる道具です。
なぜなら、思考の戦いにおいては以下のブチャラティの言葉に集約されます。
“ぶっ殺してやる”ってセリフは終わってから言うもんだぜ
俺たちギャングの世界ではな
――『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 偉大なる死(ザ・グレイトフル・デッド)』
「思いついたときには書き終えている」。この「一動作(ワンアクション)の速さ」こそが、紙とペンの持つ最大の魅力であり、
アイディアを確実に仕留める「ナイフ」なのです。
- それぞれの道具を選ぶ理由
 - もちろん、デジタルが優れている場面
 
等はまた後の話に(気が向いたときに)記します。
			
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