ファンタジーな世界観に比してシビアな戦略。リプレイ性も高くて程々の時間で終わるのも魅力的な2人用カードゲームでした。
◎概要
プレイヤー達は西欧の童話の登場人物として、森の冒険へと出かけます。魔女や国王、狐や白鳥などお馴染みのキャラクターの力を借りることで相手より優位に立ち回ったり逆転することができるでしょう。
しかし、勝利を求めすぎると童話ならではの報いが待っています。
時には謙虚に立ち回ることも求められます。どちらが相手よりも先に勝利点を得られるでしょうか?
◎ゲームシステム
いわゆるトリックテイキング。
- 1ラウンド13トリック
- スートは3種類
- ランクは1~11
- マストフォロー
- 切り札あり
- バーストあり
- ビディングなし
と言えば分かる方には通じると思います。ラウンドごとに得点を計算し、21勝利点を先に取ったプレイヤーが勝者となります。
(※必要な勝利点はオプションで変えられます)
◎素晴らしいと思った点
○カード効果によるトリック操作
これが最大の魅力です。全ての奇数ランクに
- トリックに負けた側がリードできる
- トリック中に切り札を変えられる
- 相手のフォローを半強制にする
などの効果があるので、たった33枚のカードの2人プレイでも楽しめる設計になっていました。
○勝ちすぎると全てを失うバースト
本ゲームのもう1つの魅力。トリックに勝ちすぎると童話の悪役のような報いが――“勝利点0”が待っています。逆に勝ち数が少ないと謙虚な者として多くの勝利点を得ることができます。
ゲームの序盤から終盤まで「勝ち負けをどうコントロールするか?」「相手を勝ちすぎる状態に持ち込むには?」などの思考と読み合いが生まれます。
特に、互いに6トリックずつ取っていたときの最終トリックの緊張感は得がたいものがありました。
○初期手札の強弱の緩和によるリプレイ性
上述した2つの相乗効果です。手札にランクやスートの偏りがあっても挽回できるチャンス/逆転される可能性が最終盤まで読みにくくなっています。そして、最大6枚の非公開情報があるので確率計算を完全に読み切ることが難しくなっています。
◎やや残念な点
○スートの見分けがつきにくい
スート「月(紺)」と「鍵(水色)」。両者が青系なので見誤ってしまうときが何度かありました。鐘のスートがオレンジなので、せめて1つは緑系にしてほしかったという感じです。
○例外処理が少し面倒
「9:魔女」や「1:白鳥」を同時に出したときに迷いがち。ルールをよく読めば腑に落ちるのですが、言語依存に慣れていないプレイヤーと遊ぶときには注意が必要です。
◎まとめ
他のレビューでも書かれているとおり「トリックテイキングなのに2人用」の存在はそれだけでも貴重。
ルール選択によってプレイ時間を調整できるのも魅力的。なので、ボドゲ会の待ち合わせで2人が先行した時にも役立ってくれるでしょう。
ファンタジックなイラストとスリリングなゲーム展開をスキッとしたコンポーネントに落とし込んだ小箱ならではの傑作です。
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