※本記事は『ボドゲーマ』にも寄稿済みです。
https://bodoge.hoobby.net/games/glass-road-mini-expansion/reviews/43618
ボードゲームの様々なメカニズムが詰め込まれているのに比較的とっつきやすく、リプレイ性も高い作品。
特に、人数によってプレイ感が変わるのが印象的でした。
クローズドのゲーム会で持ち込んでいただき、気に入って即購入したという作品です。
概要
プレイヤーはガラス/レンガ工房の村を発展させていきます。元々いる職人たちと利害の折り合いをつけながら、誰が村の発展に寄与するでしょうか?
ゲームシステム
プレイヤーのアクションは基本的にカードを出すだけです。なのに、
- カードによる事前プロット
- その際に発生するバッティングとバリアブルフェイズオーダー
- 資源管理
- タイルプレースメント
等の要素がギュッと詰まっていました。
特筆すべき内容として、ダイヤルによる資源管理。「ある程度の基本資源が増産されると、上位資源が増える代わりに基本資源が減ってしまう」特徴があります。
これは利点であり欠点です。
- 得点を生み出す建物を作るためには上位資源が必要。
- 上位資源は勝手に生み出されてしまうので建物の資源が足りなくなる。
のジレンマ。そこに、バッティングが加わります。他の人とアクションが被ってしまうと、同じアクションを強制的に取ります。これによって、「資源を生産してから建物を建てたいのに、空振りになってしまう」ままならなさが終始生まれてしまいます。
それだけに一つの手番が極めて重く、勝利点一つが極めて高いひりつくゲームを楽しむことができました。
このゲームで感じたところ
「人数でプレイ感ががらりと変わってしまう」ところです。
- 4人
- 2人
- ソロ
で思ったことを以下に記します。
4人プレイの場合
「ベスト人数」と言うだけのことはありました。とかくバッティングの読み合いが熾烈です。
- 両方のアクションをプレイしたい(被らないアクションを取りたい)
- 相手のバッティングを可能な限り誘発させたい
- けど、それぞれによって目算が狂いたくない
のトリレンマ。状況を見定めて出し抜いていくバチバチのインタラクションが発生します。
2人プレイの場合
手札以外の全てが公開情報であるため、相手の狙いが見えてきます。そんな中でのバッティングの有無は非常にシビア。手札と手数がモノを言う本作の魅力を別の意味で味わえます。
バッティングが互いに発生する状況としない状況が顕著に分かれていて、そこからのゲームプランに差がつくという形でした。
ソロプレイの場合
本作の対人戦とソロプレイは全くの、完全に別ゲームです。
「事前にアクションをカードで決めていく」までは一緒ですが、なんと、「ランダムな順番でプレイする」という豪胆なルールが設定されています。
しかも、アクションがフルで使えるのはプロットしたカードの1枚だけです。そのために
- リスクをできるだけ回避して着実に資源を増やすか?
- 最善手が出ることを期待してイチバチの勝負に出るか?
の「ざわ・・ ざわ・・」としたディシジョンメイキングと運否天賦(ある意味でのリスク管理)が痺れます。
他のウヴェ・ローゼンベルクの作品との比較
ここで、他のウヴェ作品のソロバリアントとの比較は、興味をお持ちの方にとっての一助となるかと思います。
- アグリコラ (ラウンドカードのめくれ運があるものの、手持ちの小進歩と職業でゲームプランは行いやすい)
- ヌースフィヨルド(準完全公開で資源は予測可能。Cデッキのめくれ運はカバー可能)
- アルルの丘(全てのアクションが完全公開。運要素はセットアップのみ)
- レイクホルト(目標が見えているし支援カードやシナリオでゲームメイクは支援されている)
等に慣れている方にとって、本作はかなり面食らうでしょう。
なにせ、上記の定跡である「事前に渡されるものがある程度見えているので最善手を取れる」がほぼ通じないのです。他の方がレビューされたように、本作のソロはある種、ソロで行う麻雀に近いものが感じられます。運と実力の両方を天秤にかけつつ得点を稼いでいくシステムが今から10年も前に作られていたことに脱帽するほかはありません。
まとめ
- 様々なメカニズムを有しているのに中量級
- バッティングの読み合いによるインタラクション
- 勝手が違うソロプレイ
など、独自面がことさらに強調されているボードゲームという印象です。
個人的に気に入っているのがテキスト量の少なさ。やることもシンプルでタイル類も少なめだったので、ボードゲームをそれほどやりこんでいない友人にも導入できるという特徴はとても気に入りました。
ソロプレイの(いい意味での)ままならなさとセットアップのしやすさも魅力的。程よいプレイ時間で色々なボードゲームのメカニクスも味わえる珠玉の作品です。
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