2025年上半期で遊んだボードゲームでも特に面白かった『アイドルアライブ』が、中国ボーカロイドVsingerとコラボレーション。

基本的なルールやゲームの流れはそのままに、単体でも本家との対決でも楽しめる作品として登場しました。
本レビューは、独立拡張のため、基本セットをある程度知っている方向けの記事になること、最初にお詫び申し上げます。
ゲームの概要
基本セット『アイドルアライブ』が持つ
- プレイヤーはプロデューサーとなり
- 3人組のアイドルユニットを編成し
- 楽曲で場のボルテージを高め
- ファンを獲得し
- イベントなどを活用してライブを成功に導く
特徴はそのまま、「独立拡張」としてリリースされました。
後述する“ある一点”を除いては、入門者にも経験者にも楽しめる作品となっています。
基本セットとの共通点
以下の特徴はそのままです。(詳しくは拙稿をご確認ください)
- TCGに慣れていない人でも直感的に理解しやすい楽曲カードの視認性
- アイドル達による多様な戦略
- 分かりやすい位相管理とターン進行
- ファンを中心としたインタラクション(とデメリット持ちファンを巡る駆け引き)
これらの基本セットのルールや楽しさはそのままとなっています。
本作ならではの素晴らしい点
男性歌手によるキャラクターの幅の広さ
これが大きな特徴と言えるでしょう。戦略面のみならず、世界観の広がりという大きな魅力を与えてくれました。
「女性アイドル達のステージ」という基本セットのイメージに対し、『アイドルアライブ Vsinger』は「男女混合ユニットも可能な、より多様なパフォーマンス」を描いています。
女性アイドルも、より大人びたキャラクターという明確な差別化がある印象です。
各種カードの調整による収束性の向上
- センタースキルによる妨害要素
- 取り回しやすく、得点効率も高めやすいイベント
の2つが特に印象的であり、複数取るとデメリットとなってしまう「やっかいなファン」のやっかいさを抑えることと、終盤の緊張感に貢献しています。
カジュアル構築でも楽しめるカード群
基本セットのカジュアル構築(1つのセットを2人でシェア)で時折見られた、特定の組み合わせによる一方的なゲーム展開が起こりにくく、どのアイドルを選んでも接戦を楽しめるようになっている点も好感が持てます。
これもまた、本作のとっかかりを楽しみたい初心者向けの内容として機能していました。
拡張でありがら基本セットと混ぜられない制約
公式で
『アイドルアライブ』と混ぜてデッキを構築することは非推奨です。『アイドルアライブVsinger』の収録カードのみでデッキを構築してください。
と言われる理由が、本作を開封して納得。
「同一効果を持つカード」が非常に多いのです。(MtGプレイヤー向けの説明をすると《ラノワールのエルフ》と《エルフの神秘家》のような関係です)
そのため、混ぜてデッキを構築すると
- カードドローに長けたデッキ
- 妨害一筋のデッキ
を特化させてしまう事態が発生。とはいえ、基本セットとVsingerの対戦は、「特徴が似通っていながら軸をずらす」という対戦を楽しむことできます。
本作の問題点
アイドルたちの後ろ姿

個人的に残念と思う点がこちらです。「アイドル駒の後ろ姿が描かれていない」です。
プレイヤーはプロデューサーとして、ゲーム中、常にアイドルの「背中」を見つめながら采配を振るうことになります。その肝心の背中がただのイメージカラーのシルエットのみとなっています。
これは没入感という点で致命的といってよく、基本セット並びに拡張『Stellar Beats』で積み上げてきたゲーム体験の全てが「九仞の功を一簣に虧く」かのごとく、この一点によって色あせて感じられてしまいます。
ライブの臨場感・ゲームの没入感という確かな手応えが、この、「アイドル達の背中を見つめる」ことだという点だと気づかされた皮肉な状況です。
まとめ
『アイドルアライブ Vsinger』は、基本セットを下敷きにした分かりやすいルールとファンを軸にしたインタラクションを基礎に置きながらも
- Vsingerの特徴に合わせたスキルやイベント
- カジュアルでもエキスパートでも楽しめる
作品です。それだけに、「ただ空白を見るかのごとし後ろ姿」が気になる作品でした。
これを気にしないという方は
- コラボ先に興味がある
- 基本セットとは違ったゲーム体験をしたい
- 1セットでも本シリーズを楽しみたい
- 2~30分で楽しめ、感想戦も盛り上がる2人用のボードゲーム
という点でオススメできる作品です。