概要

Linuxサーバの構築時に非常に面倒で厄介な「動いているサービス(systemctl status hoge.service でenabledになっているもの)だけを取り出し、表に転記するという作業が

  • 限りなく単調で
  • とてもミスが多い

重箱の隅をつつくような作業を一発で解消するワンライナーの紹介です。

前提

RHEL系Linuxで動きます。(筆者環境Rocky Linux)

ワンライナー

※これは

sudo su 

としてから入力した方が無難です。(パッケージによっては一般的権限では見られないため)

 { echo -e "| ソフトウェア名 | バージョン |\n| --- | --- |"; systemctl list-unit-files --type=service --no-legend | awk '{print $1}' | grep -v '@\.service$' | xargs -r systemctl show -p FragmentPath | sed 's/^FragmentPath=//' | grep '^/' | sort -u | xargs -I {} sh -c 'if rpm -qf "{}" >/dev/null 2>&1; then rpm -qf "{}" --qf "| %{NAME} | %{VERSION}-%{RELEASE} |\n"; else echo "| $(basename "{}") | (not owned by any package) |"; fi' | sort -u; } 

スクリプトの解説

このコマンドは大きく分けて「ヘッダーの出力」「サービスファイルのパス特定」「パッケージ情報の取得と整形」の3つのフェーズで動いています。

1. 表のヘッダーを作成

  • { echo -e "| ソフトウェア名 | バージョン |\n| --- | --- |"; ... }
    • 最初にMarkdown形式の表の1行目(項目名)と2行目(区切り線)を出力します。
    • 全体を { } で囲むことで、ヘッダーと後の実行結果を一つの出力ストリームとしてまとめています。

2. サービス一覧からファイルパスを特定

ここからがメインのパイプラインです。

  • systemctl list-unit-files --type=service --no-legend
    • システム上の全サービスユニットを表示します。--no-legend でヘッダー行を省きます。
  • awk '{print $1}'
    • 出力結果から1列目(サービス名)だけを抜き出します(例: sshd.service)。
  • grep -v '@\.service$'
    • インスタンス化されたユニット(user@.service など)を除外します。これらは実ファイルが少し特殊なためです。
  • xargs -r systemctl show -p FragmentPath
    • 各サービスに対して、その定義ファイル(ユニットファイル)がディスク上のどこにあるか(FragmentPath)を取得します。
  • sed 's/^FragmentPath=//'
    • 出力に含まれる FragmentPath= という文字列を削除し、純粋なパス名だけにします。
  • grep '^/'
    • 空行や無効なパスを除外し、/ から始まる絶対パスのみを残します。
  • sort -u
    • 重複したパスを削除します。

3. RPMによるパッケージ照会と整形

特定されたファイルパスを一つずつ RPM データベースと照合します。

  • xargs -I {} sh -c '...'
    • 各パス({})に対して、シェルスクリプトを実行します。
  • if rpm -qf "{}" >/dev/null 2>&1; then ...
    • そのファイルが RPM パッケージによって管理されているかを判定します。
    • 管理されている場合: rpm -qf を使い、パッケージ名とバージョンを Markdown の行形式 | 名前 | バージョン | で出力します。
    • 管理されていない場合: (手動で作成したサービスなど)「(not owned by any package)」と出力します。
  • sort -u(最後)
    • 最終的なリストをソートし、重複を排除して綺麗に並べます。

実行結果のイメージ

コマンドを実行すると、以下のような結果が得られます。

ソフトウェア名バージョン
chrony4.1-3.el9
openssh-server8.7p1-10.el9
my-custom-script.service(not owned by any package)
systemd250-6.el9

このワンライナーの利点

  • 徹底した合理性。
    • なにせ「目視確認」という手段が排除されます。一切のヒューマンエラーがなくなります。
  • 一覧性と整合性。
    • 「最新の情報を全て表示せよ」という要求に対してもコマンドを叩くだけで済みます。
  • 再利用性
    • これが一番大きいです。2020年代ITで最も使いやすいMarkdownのテーブル形式。そのため、
      • Redmine
      • VS Code
      • Notion
        などにいくらでも反映可能。そして、一度テーブルにしてしまえばExcelへの転記も一発です。

まとめ

「ウサギとカメの寓話」は、コツコツやる者が強いパターンではありますが、「60分の道を頑張って55分に縮めるよりも、30分かけて『1分で終わる手段を考える』」方が、本当の「タイムパフォーマンス」だと思った次第です。

備考

Ubuntuサーバでも、このようにすれば動きます。

{
  echo -e "| ソフトウェア名 | バージョン |\n| --- | --- |"
  # 1. サービスファイルのパス一覧を取得
  systemctl list-unit-files --type=service --no-legend | \
  awk '{print $1}' | \
  grep -v '@\.service$' | \
  xargs -r systemctl show -p FragmentPath | \
  sed 's/^FragmentPath=//' | \
  grep '^/' | \
  sort -u | \
  # 2. 1行ずつ読み込んで処理(whileループでシェル起動を最小化)
  while read -r path; do
    # dpkg-query -S は dpkg -S より高速で安定しています
    res=$(dpkg-query -S "$path" 2>/dev/null)
    if [ $? -eq 0 ]; then
      pkg=$(echo "$res" | cut -d: -f1)
      # 複数のパッケージがヒットする場合があるため、最初の1つを取得して詳細表示
      dpkg-query -W -f="| \${Package} | \${Version} |\n" "${pkg%%,*}"
    else
      echo "| $(basename "$path") | (not owned by any package) |"
    fi
  done | sort -u
}