オーバラー・グリンデルワルト氷河に続く890段の階段を登り切った僕を待っていたのは、更にぞっとする光景でした。

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この吊り橋を渡る。先の階段で心臓が落ち着いた頃だというのに、別の意味で心臓がドキドキです。長さ50メートル、頑丈な作りをしていそうですが「何かあったら」と考えずにはいられません。

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しかし、「カメラを構えた者の悲しいサガ」と言うべきでしょうか。身の毛のよだつ風景を前にしても、「それを撮影せずにはいられない」と、ファインダー越しに「真下の奈落」をしっかりと捉えます。

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そして、見えました! 溶けかかっているものの、間違いなく氷河です! これがあの川の流れや滝を生み出すのか…… 何万年をかけてここまでたどり着いたのでしょうか? 悠久な時の流れを想像するコトしきりです。

大満足な光景です。昼食を撮るには絶好のロケーションです。しかし、このときの僕は「何か嫌な予感がして」早々と降りることに決めました。

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先の日記で念仏のように「890段を登る」と言いましたが…… 逆を返せば、帰り道はそれを下ることに他なりません。即ち、往路以上の恐怖を伴います。登っているときは岸壁しか見えませんが、下っているときは嫌でも下界の風景が目に付くわけで…… 正直、生きた心地がしませんでした。

“下界”へとやってきて、言葉通りの意味で腰が抜けました。心底ほっとした野も束の間、結構な強さのにわか雨。……自分自身の悪運に惚れ惚れです。もし、あの氷河を前にして昼食を取っていたら、間違いなく下りの階段で雨に遭ったわけで。

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しばし雨宿りをしてインターラーケンに戻ろうと元の道を歩き始めます。ここはまだ「綺麗な」水の流れでした。

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良く見ると、山肌に直結するような建物があります。観測所なのか、登山客用に用意された山小屋なのか…… いずれにせよ、こんな場所に建築した彼らの胆力は凄まじいものがあります。

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犬の散歩道にもなっていた橋。おとぎ話のような風景です。

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かと思えば大量の薪が積まれていたり…… 恐怖感を吹き飛ばすかのように様々なものをシャッターに収めていました。

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そして、バスに乗って再びグリンデルワルド。雨で濡れていますが、インターラーケーンに降りた頃には、また日が照っていました。変わりやすい天候の中、それほど悪天候に見舞われなかったのは僥倖と言うべきでした。

(続きます)